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株/投資/ヘッジファンド/きまぐれぽんた

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衝撃的な株主総会



29日の株主総会で、岡本孝善社長(58)ら経営陣の再任案が否決
されるという前代未聞の事態が起きたアデランスホールディングス。
筆頭株主の米投資ファンド、スティール・パートナーズ・ジャパンなど
から「経営者失格」の烙印を押されてしまった岡本社長を同日夜、
都内の自宅で直撃すると、「否決は想定外」と力なく語り、「流れで
こうなったというか、結果としてなっちゃったというか…」と戸惑った
様子をみせた。

岡本社長の心模様を映すように小雨が降るなか、午後8時過ぎに
社用車で帰宅してきた。自宅玄関前で立ち止まった岡本社長の
表情には疲労の色が濃くにじんでいた。 「結果は結果ですから」と
いってしばし黙った後、腕を組み、「ぼく自身、想定外でした」とポツリ。
自宅玄関を背に時折、自嘲気味な笑みを浮かべた。アデランスの
経営陣には、人事案は可決されると読んでいたフシがある。
スティールは昨年、買収防衛策の導入をめぐってアデランスと委任状
争奪戦を展開したが、今回は比較的穏やかに総会当日を迎えた。

さらに、外国人投資家に大きな影響力を持つとされる米国の議決権
行使助言会社が、アデランスの今回の取締役再任案に「賛同」を
推奨していたことも安心感を誘ったようだった。最大の焦点である
今後の対応については、「すべてこれから。リセットしてゼロ。まだ
何も決まっていません」と語った。今後は新たな取締役候補を選び、
速やかに臨時株主総会を開くことになるが、「その時期もまだ。それも
含めてこれから検討します」と述べ、何度も「これから」を繰り返した。

人事案を否決したスティールに対しては、意外にも「憤り? ありませんよ。
株主さんだし。別に怒ることはないでしょう」と一笑に付した。「SPさん
(スティール)が何か(総会後にオフレコの記者懇談を)行ったよう
ですが、伝え聞く限りでは、私どもと誤差はないですから」。それだけに、
総会での結果にはもどかしさを感じているようだった。一方で、「個人
的な見解ですが」と断ったうえでこんな印象も吐露した。「(スティール
以外の株主を含めて)われわれの経営に対して不信任というのなら、
きちんとそれぞれ提案もあったのでしょうが…(それがない)。どうも
流れでこうなったというか、結果としてなっちゃったというか」

現経営陣に「ノー」を突き付けるなら、誰がいいのか提案してほしかった。
それがなく会社側の人事案だけが否決され、結果として経営陣が事実上
不在になったことへの釈然としない思いがにじんだ。気になるのは、
今後の身の振り方。岡本社長は「私の処遇ですか? それも含めて
これから。仮に選任されていたとしても、いずれ誰かに(代表取締役を)
渡していくのは確実ですし。ぼくはオーナーでもないから。うちの会社が
成長性を保ってやっていくように今後の人選を含めて、スキームを
考えます」と語った。 社長を含めた会社側の取締役選任案がファンド
主導で否決されたのは、国内では初めてのこと。改めてそのことを
尋ねると、「歴史に残るじゃない」と力なく笑い、「じゃあ、そろそろ」と
明かりが漏れる自宅の中に消えていった。

岡本社長はアデランスの創業期に入社し、たたき上げとしてアデランスの
成長を支えてきた。入社したのは1975年6月のこと。アデランス設立
(69年3月)から間もない時期で、岡本社長の社員番号は56番だった
というから、まさに同社のすべてを知る男といえる。東京都理容学校
(現東京理容専修学校)を卒業して愛知県の実家近くで理容店を開く
つもりだったが、父親が急逝して計画が頓挫。理容師の資格をかつらの
技術者として生かそうとアデランスに入社した。金沢支店長をふりだしに
全国各地の支店長を歴任。85年の株式店頭公開時には証券取引所の
担当者にかつらメーカーという業種を理解してもらおうと、何度も事業
内容を説明した。その実力は、創業者の根本信男最高顧問(67)にも
早くから評価され、34歳で取締役、45歳で社長就任というスピード
出世を果たしていった。岡本社長は高校時代、野球部のエースとして
甲子園を目指したが、愛知県大会の途中で肩を故障し、挫折感から
高校を中退してしまったという苦い思い出もある。約40年の歳月を
へて、今度は経営者として挫折を味わうことになった。


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